身体拘束は、患者さんの自由を制限するだけでなく、生活の質を大きく損なう行為です。
患者さんの尊厳を守るため、当院では職員一人ひとりが身体拘束の最小化に努めています。

当院では、医療を提供するうえで 身体拘束は原則禁止としています。
身体拘束とは、転倒・転落の防止や、点滴・呼吸器などの医療機器を患者さんご自身で外してしまうことを防ぐ目的で、行動や動きを制限する行為をいいます。

＜具体例＞
　・ベッドや車椅子から移動する事を防ぐために体をベルトで固定する
　・チューブやオムツを外さないよう、ミトンやつなぎの着用、上肢を固定する
　・ベッドを柵で囲み、降りられないようにする

こうした対応は一見「安全のため」に見える場合がありますが、
患者さんの自由を奪い、筋力の低下や関節拘縮などの身体的影響、さらに心理的苦痛を生じさせる可能性があります。
そのため当院では、できる限り拘束に頼らない方法を優先しています。

当院では、以下のような多面的な工夫により、身体拘束を用いないケアを実践しています。

　・環境の整備（ベッド位置や照明の調整、センサーを用いたナースコールの工夫、緩衝マットの使用など）
　・医療機器（チューブ等）の固定方法の工夫
　・頻回の観察や声かけ、環境変化に伴う不安の軽減、見守り体制の強化
　・薬剤や身体状況の確認、せん妄予防ケアの実施
　・医療チーム内での情報共有と、継続的なケアの実施
　・ご家族などの面会や関わりにより安心感を提供する取り組み

ただし、このような対策を行っていても、転倒・転落による外傷や骨折、チューブをご自身で抜いてしまうことなどを完全に防ぐことはできない場合があることをご了承ください。

患者さんの生命を守るため、やむを得ず身体拘束を行う場合があります。
その際は、以下の３原則に基づき慎重に判断します。

　１．切迫性：患者さん、または他の患者さんの生命・身体が危険にさらされるおそれがある場合
　２．非代替性（ひだいたいせい）：身体拘束以外に安全を確保する方法がない場合
　３．一時性：身体拘束は必要最小限の時間にとどめること

身体拘束を実施する際は、医師・看護師を含む多職種で検討し、ご家族へ説明のうえ同意書を用いて確認いたします。
緊急性が高い場合は、夜間でもお電話でご連絡することがございます。
同意書の記入にご協力をお願いいたします。

身体拘束は患者さんに 大きな精神的苦痛 を与える可能性があります。
不安・怒り・諦めといった感情が生じ、人間としての尊厳が傷つけられたと感じる方もいらっしゃいます。
身体拘束を行わない医療を実現するためには、ご家族のご理解とご協力が欠かせません。
患者さんが安心して入院生活を送れるよう、当院はご家族と共に考え、最善の方法を選択してまいります。

どうぞご理解とご協力をお願いいたします。